「妻から離婚したいとの言葉。問いただすと、浮気していて、相手との子供を既に身ごもっていた・・」
浮気は許されない行為ですが、妻がその相手との子供を妊娠したなら、そのショックはなおさらのこと。しかし、あくまで冷静に必要な情報を収集していく必要があります。今回はそのようなトラブルの対処法をご紹介します。
妻が浮気して妊娠したら離婚すべきかを考える
妻が浮気によって相手との子供を妊娠した場合、夫であるあなたは難しい選択を迫られることになります。その妻と離婚するか、それとも婚姻関係を継続するかということです。どちらを選択するにしても、様々な事を考えなければなりません。まずは、実際にあったケースと当事者の選択を見ていきましょう。
妻が浮気で妊娠してしまったケース1・タレント男性
Aさん(仮名)は世間的によく知られたタレントで、2005年に一般女性と結婚しましたが、2015年に妻の浮気及び妊娠が発覚しました。その年に妻とは離婚し、妻は翌年6月に相手との子供を出産しました。その子の法的な親子関係は浮気相手にありますが、浮気相手は既婚者であったため、Aさんが元妻との2人の子とともに、その浮気相手との子も一人で養育していくことにしました。なお、Aさんは浮気相手に対してその子の養育費及び、元妻に対して間の2人の子の養育費を請求したほか、元妻と浮気相手に慰謝料を請求しました。
<Aさんの選択>
- 浮気した妻とは離婚
- 元妻との間の子供を養育
- 浮気で妊娠した子供もあわせて養育
- 元妻と浮気相手に慰謝料を請求
妻が浮気で妊娠してしまったケース2・中年サラリーマン
Bさん(仮名)は40代のサラリーマンで、妻(30代)とはごく平凡な夫婦生活を送ってきました。しかし、ある日突然に妻の浮気が発覚し、夫婦は別居しました。その後、妻が相手の子供を妊娠していることも明かされ、離婚を要求されました。Bさんは離婚に同意しましたが、Bさんと妻との間の10代の子供は大きな精神的ショックを受けました。その子の親権はBさんに与えられましたが、妻を妊娠させた浮気相手に対して、400万円の慰謝料を請求し、その額で合意に至りました。なお、その妻は浮気相手と再婚しました。
<Bさんの選択>
- 浮気した妻とは離婚
- 元妻との子供を養育
- 浮気相手に対し慰謝料を請求
妻が浮気で妊娠してしまったケース3・自営業男性
自営業を営むCさん(仮名)は妻と10年の結婚生活で6才、8才の2人の子供に恵まれました。しかし、Cさんは仕事に多忙なせいか、あまり家庭を顧みられず、妻は子供を実家に預けて、夜遊びを繰り返していました。そんなある日、妻から浮気の告白と相手の子供を妊娠していることを明かされました。Cさんは離婚も考えましたが、子供がまだ幼く、母親が必要だと考え、結局離婚はしないことにしました。ただ、妊娠した子供は浮気相手に費用を負担してもらい、人工中絶することになりました。また、浮気相手には示談金として100万円の請求をし、合意に至りました。
<Cさんの選択>
- 浮気した妻とは婚姻関係を継続
- 妊娠した子供は人工中絶
- 浮気相手に対し示談金を請求
浮気で妊娠した場合は、通常の浮気より難しい問題になる
以上、具体的なケースを3つ見てきましたが、離婚するかしないかを決めるにあたっては様々な問題を考えなければならないことがお分かり頂けたと思います。具体的には、今いる夫婦間の子供の問題や、妊娠した子供を産むのか、中絶するのか、そして浮気相手(及び自分の妻)に慰謝料(または示談金)をいくら請求するのかということです。いずれにせよ、妊娠までしてしまった場合は通常の浮気よりも物事はさらに複雑になり、難しい問題となることを覚悟しておきましょう。
離婚する場合に考え、行動するべきこと
実際に妊娠した妻と離婚する場合には、様々な事を考える必要がありますが、最優先は今いる夫婦間の子供の親権と養育費の問題です。第二に、妊娠した子供の戸籍の問題、第三に、浮気相手と自分の妻に対しての慰謝料請求の問題で考えていきます。順に見ていきましょう。
夫婦間の子供の親権と養育費の問題
浮気をし、さらに相手の子供を妊娠した妻に対して、自分の子供を任せる気になれないという感情は当然理解されるべきでしょう。しかし、実際には子供の親権はどちらが夫婦関係を破綻させたかには関係なく、子供の健全な成長にはどちらの親がふさわしいかということで決定されます。そして調停で父親が親権を得られたケースは全体の1割に留まっています。つまり、親権は基本的に母親有利なのです。それでは、どうすれば親権を得ることができるのでしょうか。
話し合いで妻の合意を得る
夫婦や弁護士で話し合って離婚の条件を決定する協議離婚では、親権は当事者間の問題となるため、妻の合意さえ得られれば親権を得ることができます。妻が浮気をして妊娠したことの負い目や、子供を妻が引き取り再婚することになった際の家庭環境の複雑さ(妊娠した子を加えると異父兄弟になるなど)を突くことによって、交渉を有利に進めていきましょう。
裁判所の調停による親権の判断基準
話し合いがどうしてもまとまらず、親権を妻が譲る気がない場合、親権の行方は裁判所による調停に委ねられます。その際、裁判所は以下の点から親権を決定します。
- 父母の事情(子供への意欲、生活能力、生活環境など)
- 子の事情(年齢、性別、親との情緒的結びつきなど)
- 継続性の原則(これまで子供をよく面倒みた親が親権に有利)
- 子の意思の尊重(子供がどちらと一緒に暮らしたいかという意思)
- 兄弟姉妹不分離の原則(一緒に育った兄弟姉妹は分離させない)
- 母性優先の基準(乳幼児は基本的に母親に親権が与えられる)
この6項目の中でもっとも重要視されるのは、「継続性の原則」となります。母親が親権に有利なのは、父親が仕事に専念するためにあまり家庭を顧みられず、母親が子供の面倒をみることが多いため、この継続性の原則が母親に有利に働くためです。また、その他に重要になるのが「子供の意思」で、子供が母親と父親のどちらと一緒にいたいかという意思は離婚調停の際に特に尊重されるべきものとされています。小さい頃から子供は母親に世話されて育つことが大半なため、母親と一緒にいたいと思う子供が多いのは想像に固くありません。これらが、父親が親権獲得に不利な理由なのです。
調停で子供に対する積極性をアピールする
裁判所の調停で親権を得るには、前項の判断基準を見た上で、自分が親権者としてふさわしいと判断されるような状況を作ることが重要です。裁判所は特に「継続性の原則」を優先するので、なるべく子育てに主体的に関与することが大切です。夫婦で別居となった際も、できれば子供と同居にしておきましょう。ただし、無理矢理に妻と同居している子を連れてくるのは、親権者としての適格性が疑われますので避けましょう。たとえ同居することができなかったとしても、子供と積極的に面会し、子供の学費を負担するなどして、子供との絆を深め、調停でそれをアピールすることが重要です。
養育費は妻に請求できるか
もし親権の獲得に成功した場合、あなたは妻に対して子供の養育費を請求することができます。養育費は妻との合意があれば、その額で決定されます。話し合いで決まらない場合は調停で決定されますが、その場合は裁判所の基準(養育費算定表)で額が決定されます。もし妻が無収入であった場合には月額は0~1万円とほとんど取ることができませんが、再婚によって新たな家庭に入ることにより経済的に余裕ができれば、増額を要求することも可能です。
妊娠した子供の戸籍上の問題
離婚するからといって、妻の中に宿った浮気相手との子供と、あなたが無関係になるというわけでは決してありません。例え浮気相手の子供だとしても、婚姻中や離婚後300日以内に出生した子供は自分の子供として戸籍上に入ってしまいます。このことを嫡出推定といいます。この嫡出推定は家庭裁判所に嫡出否認調停を申し立てることによって拒否することができます。ただし、この申し立ては出生を認知してから1年以内に申請する必要がありますので注意しましょう。
浮気した相手と妻に対して慰謝料を請求する
浮気相手が妻を既婚者と知って不貞行為に及んだ場合、妻だけでなく浮気相手に対しても慰謝料を請求することができます。その場合は、まずその相手の個人情報を掴み、また浮気の証拠も押さえましょう。自分で請求する場合は相手の住所に内容証明郵便で請求書を送りましょう。浮気の慰謝料の相場は200万円ですが、事例によって100~500万円と開きがあります。妻が妊娠した事実は慰謝料の増額の要因となります。なお、相手が支払いの拒否をしてきた場合、弁護士に相談のうえ、相手と話し合いとなり、それでも解決しない場合は裁判での判断に委ねられます。
婚姻関係を継続する場合に考え、行動するべきこと
妻と離婚せず、婚姻関係を継続する場合は、まず妊娠してしまった相手の子供を今後どうするかを最優先で考える必要があります。また、妻に今後浮気を二度とさせないようにすることも忘れてはいけません。浮気相手への慰謝料請求はいつでもできるという心構えを持ち、まずは状況の回復を図ることを優先させましょう。
妊娠した子供の今後の問題
婚姻関係を継続していく場合は、妊娠した子供を産ませるか、中絶させるかを考えなければなりません。今後の家庭環境や母体への負担も考慮して可能な限り早く最善の判断を下しましょう。
妊娠した子供を産ませる場合
もし子供を産む場合、浮気相手に引き取らせるのは現実的ではないため、自分の子として育てていくことになります。その場合、前述の嫡出否認をして、浮気相手に子供を認知させれば養育費を相手に請求できます。しかし、成長していく子供の精神衛生を考慮すると、法律上も自分の子として育てることを覚悟した方がよいでしょう。それなら通常通り、出生届を提出するだけで事足ります。ただし、この場合は養育費を請求することはできません。
妊娠した子供を人工中絶する場合
子供を人工中絶する場合は、中絶可能時期が母体保護法によって妊娠22週目までと決まっているため、関係をもった日から逆算して現在中絶が可能なのかを計算する必要があります。もし可能であったとしても、人工中絶をするかしないかは最終的には母親である妻に委ねられます。中絶すると、今後妊娠することができなくなるかもしれない等のリスクがあるため、慎重に判断を下させるようにしましょう。
浮気相手と離別させる
妻には今後二度と浮気相手と会わない、連絡しないなどと約束させましょう。書面にして念書として残しておくことでより約束はより強固なものとなります。また、連絡がつくようであれば、浮気相手にも妻に二度と接近しない、連絡しないという約束をさせましょう。これらは今後の浮気の再発防止のために必要になることです。
浮気相手に対して慰謝料を請求する
離婚しない場合でも、浮気した相手に対して慰謝料を請求することは可能です。離婚する場合と比べ、相場は50~100万円と安くなります。浮気で妊娠してしまった場合は慰謝料の増額要因となるでしょう。ただ、ここで気をつけなければならないのが、もし浮気相手が既婚者であった場合、浮気相手の妻も自分の妻に対して慰謝料を請求することが可能であるという点です。こちらが慰謝料請求に踏み切れば、報復として慰謝料を請求し返される恐れもあるため、請求するかどうかは慎重に判断したうえで決めた方がよいでしょう。
まとめ
愛する妻の浮気は当然ショックが大きいですが、それが浮気相手との子供を妊娠していたとなると、その精神的な動揺は測り知れません。そして、離婚するにしても婚姻関係を継続するにしても様々な事を同時に考えて処理していく必要があります。妻が妊娠してしまったことを悔いても仕方がありません。今は苦しい時期でしょうが、状況は必ず好転しますので、諦めずに頑張っていきましょう。