噂話やメディアを通じて、浮気、不倫という言葉を耳にする事があります。話を聞くだけの内は他人事で済んでしまうけれど、いざ、自分が浮気をされたとしたら…あなたはもしもの時に、動く自信はありますか?浮気に関する法律を知ることで、そんな不安を解消することが出来るかも知れません。
目次
人それぞれだからこそ必要な法的解釈
一口に浮気と言っても、ボーダーラインは人それぞれで基準というものはありません。浮気と判断する基準を持つことが、もしもの時に落ち着いて行動出来るカギになります。
一般的に認識されている許せないボーダーラインを目安にする
パートナー以外の異性との接触を、どの位許せるでしょうか。二人きりで会う、食事に行く、遊びに行く、ネットでのやり取り、キス、手を繋ぐ…パッと思いつくだけでも沢山ありますね。一般的に浮気と認識される行動は本当に様々で、自分的基準を持とうと思ってもなかなか纏まりません。他の人達はどう考えているのかを知る事で、自分の気持ちと折り合いを付けながら浮気のボーダーラインを決めるのも一つの手です。
お互いに共通の基準を持つ
夫婦間やパートナーとの間で、どこからが浮気とみなされるかの基準を決めておくのも良いでしょう。浮気が原因で喧嘩をしても、お互いに話し合って設けていた基準を元にすれば折り合いをつける余地があります。しかし、それもまた二人の間だけの基準に過ぎません。自分達のルール上はOKラインでも、浮気相手のパートナーにとってはNGラインかも知れないのです。浮気相手の彼氏や彼女が突然自分達を訴える…そんな可能性も否定出来ません。
法律上での基準を知る
ボーダーラインが曖昧だからこそ、それを客観的に判断する基準が必要になってきます。それが法律です。自分達のルールだけでは収まりがつかない時、話し合いが抉れてしまった時、法律上での基準を軸にして、解決の糸口を探す事ができます。法律は決して人を責める為だけの道具ではありません。法的解釈という基準も身につけておけば、万が一の事が起こったとしても出来るだけ早く和解へ導くことが出来るでしょう。
浮気行為と認められるボーダーラインになるのは「不貞行為」
法律に照らし合わせて浮気と判断される、ということは、社会的にも大きな意味を持ってきます。浮気をした事実を公にし、慰謝料や損害賠償を請求する際にとても役に立つからです。では、法的に浮気と認められる条件とは、一体何なのでしょうか。
浮気による裁判で用いられる法律
実は、浮気や不倫という言葉を使って定められた法律はありません。しかし、「既婚者が自分の配偶者以外と自らの意思で肉体関係を持った場合は、配偶者がそれを理由に離婚を訴える事が出来る」とする内容の条文があります。それが、『民法770条』です。この法律では、夫婦の一方が離婚を申し立てる事が出来る条件を下記のように定めています。
⒈ 配偶者に不貞な行為があった時
これは、結婚した夫婦のうちどちらかが、自分の結婚相手以外の異性と肉体関係を持った場合に当てはまる理由となります。
⒉ 配偶者から悪意で遺棄された時
一番簡単な言い方をすると、家庭をほったらかしにすることです。民法上、夫婦は同居義務があり、お互いが稼いできたお金を同一化して、家庭を守るという義務があります。それを放置したという理由です。
⒊ 配偶者の生死が3年以上明らかでない時
配偶者が行方不明になり連絡もなく、その生死がわからない状態が3年以上続いていた場合です。
⒋ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない時
結婚した相手がとても酷い精神病になり家庭を築いていく義務を果たせず、更にその精神病が治らないと判断された時には、離婚の申し立ててもよいという意味です。
⒌ その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある時
この条文は、法律家の間では抽象的事由と言われています。離婚したいと思った理由がどんなものであったとしても、この5番目の条文があればほぼ全てにおいて当てはまってしまいます。
肉体関係があるかないかがカギになる
上記した条文の中で、浮気による訴えが起きた時に注目されるのが1番目の項目です。「不貞行為」とは法律用語で、配偶者の貞操義務の不履行を意味します。つまり、婚姻状態の夫婦が、お互い以外の男女と肉体関係を持つことを指す言葉になり、法律上は、肉体関係がなければ不貞行為とはみなされません。ただし、いわゆるセックスではなくても、口淫や手淫など、肉体関係を匂わせる行為も不貞行為となります。
裁判で「不貞行為」とみなされるケース
浮気が原因で離婚、慰謝料請求などといった法的制裁を取る場合、重要となってくるのが「不貞行為」があったかどうかなのですが、大抵の浮気は影で隠れて行われている為、証拠がなければなかなか要求を通す事が難しくなってきます。もしパートナーが浮気を否定していたら、どのような証拠を用意すれば浮気と判断されるのでしょう。実際に裁判で有効と認められた証拠のケースを見てみましょう。
《不貞行為があったとされる証拠のケース》
- 配偶者以外の異性とラブホテルに入って出てこなかった。
- 配偶者以外の異性とビジネスホテル等の宿泊施設に泊まった。
- 電話やメール、LINE、SNS等で、性交渉を匂わせるやり取りをしていた。
- 周囲の人々が明らかに不貞行為を疑うような立ち居振る舞いをしていた。
裁判は証拠が要
浮気を疑う多くの人が証拠を掴もうとするのは、裁判において優位に話を進めるためです。不貞行為の証拠、もしくは証拠に準ずる物が提出され認められた時、そこで初めて浮気をしていた事が公的になるのです。
もう一つのボーダーライン『婚姻関係』
今まで述べてきた「民法770条に基づいた浮気の基準」ですが、実はこの法律には一つ大きな問題があります。それは、「婚姻状態にある夫婦を守る為の法律」という点です。では、カップルではあるが結婚していないパートナーの浮気の場合はどうなるのでしょうか。どんな形で結ばれた二人であれ、浮気は到底許せないものですよね。婚姻関係のないカップルの場合をみてみましょう。
付き合っているだけでは法律は守ってくれない
あの二人は付き合っている、と、周囲も認める仲良しカップルだったとしても、二人の間で浮気問題が持ち上がった時、法的には何の保護もされません。お付き合いの期間が長かったとしても、例え同棲をしていたとしても、具体的な結婚、婚姻に関する行動がなければ、法律で守って貰うことは出来ないのです。
事実婚カップルの場合
なんらかの事情で籍は入れてないが、周囲から全く分からない程普通の夫婦に見える事実婚の場合、法律はこのカップルを夫婦とみなします。挙式はしたけど入籍を後回しにしている場合も書類の上では事実婚になります。当然、このカップルの間で浮気がなされた場合、慰謝料請求も可能です。
婚約関係の場合
まだ婚姻はしていないけど、結婚することを前提におつきあいしている、そういう場合には、より結婚に近い婚約関係であれば法律の保護を認められます。例えば、本人同士の約束のみで成り立っている婚約関係の場合は保護されません。友人に知らせる、お互いの親に顔見せをして結婚の意思を伝える、親族を交えて結納を済ませる…こういった、結婚に向けての準備を整えていく中で、より結婚に近くなっている時期の婚約関係にあるカップルが保護対象になります。
婚約している人は要注意
婚約しているのに相手が浮気して婚約解消、浮気した相手に慰謝料請求、準備にかかった費用を損害賠償請求、そんな話を聴いたことはないですか?それが、婚約関係における法律の保護が認められたケースになります。まだ戸籍上は夫婦ではないから大丈夫、とい考えを持つ方は、今一度、自分達がどこまで準備を進めているか確認して下さい。
法的に認められている事が法律に守って貰えるボーダーライン
婚姻届を出して認められた夫婦と違い、理由があって出してない、結婚話は出ているけどまだまだ先の話、婚約はしたけれど式場の予約も親戚への挨拶もしていない…など、婚姻状態でないというだけで途端に立場があやふやになってしまう未婚カップルの場合、万が一浮気問題が起こったらより一層不安になりますよね。そんな時は、婚姻届を出す事をゴールとして考えてみるとわかりやすくなります。婚姻届提出に近いカップルなら、法律が適用されやすくなりますので、一度自分達のいる位置を確かめてみましょう。客観的に捉えられたら、今まで気がつかなかったお互いの気持ちを新たに発見出来るかも知れません。
浮気の代償は精神的にも経済的にも大打撃となる(大見出し)
浮気されていると分かった時、心が深く傷つき、精神に大きな負担となります。それをお金で謝罪するのが慰謝料です。では、浮気をした側にとって、慰謝料とは果たしてどのような意味合いを持つのでしょうか。そしてその金額は、どのようにして決めていくのでしょうか。
100万〜500万という慰謝料の相場はただの目安
浮気をした場合の慰謝料は、浮気の内容、回数、離婚に至ったか否か、浮気前の夫婦関係はどうだったかによって変わってきます。もしあなたが浮気をして慰謝料請求され相場を調べた時、出てくる金額は100万〜500万くらいでしょう。しかし、それはあくまでただの目安です。実際にはそこから更に詳しい浮気の内容を調べ、プラスされたりマイナスされたりして、金額が決まっていくのが浮気による慰謝料金額です。
慰謝料の請求金額は収入状況に応じて変動することもある
例えば、100万の慰謝料を請求された時、月収100万の人と月収10万の人では、経済的にも精神的にも受けるショックは大きく違います。慰謝料の請求の相場が有るようで無いような状態なのはその為です。慰謝料の相場に浮気の内容を考えて平均的な金額を請求したとしても、相手の状況次第では大きく請求金額を下回る可能性もあります。
社会的制裁としての慰謝料の支払い方法
慰謝料の請求で裁判を起こす、とういうのも社会的な制裁として充分意味がありますが、中には支払い方法で制裁を与える場合があります。慰謝料を払う側としては、金銭的負担を少なく、社会的対面を保つ為、周囲の人にバレないように分割で払いたいという要求を出すことも少なくありません。もし一括で大きな金額を支払うとしたら、内緒にしたい家族や親族、勤め先の会社にまで知れ渡る可能性もあります。浮気の代償は、金額的な経済負担のみならず、このような社会的制裁による精神負担も背負うものだという認識が必要です。
慰謝料請求が出来ない場合もある事を知っておく
相手が悪いのだから慰謝料を請求して反省をして貰いたい…そう思っても、実は浮気相手に慰謝料を請求出来ない場合があります。法の上では平等、という言葉があるように、相手も法律で守られる場合があるのです。
法律上浮気とみなされないから請求出来ない
自分のパートナー以外の異性と肉体関係を持った場合は浮気とみなす、これが基本的な法律の判断基準ですが、実は、その法律に基づいて、例え肉体関係を持ったとしても浮気と認定されない時があります。
法律上浮気と判断されないので請求出来ないケース
不貞行為を侵さない以外で、法律が浮気と判断しないケースをみてみましょう。
「故意・過失」が無い場合
「故意」「過失」とは、それぞれ「悪いことだと分かっていたけれどもやった」「悪いという確信はなかったが注意していたら防げたのに不注意でやってしまった」という意味です。浮気でいうと、「既婚者なのは分かっていたけど肉体関係を持った」「もしかしたら既婚者かなあと思っていたけど不注意でそれを確かめずに肉体関係を持った」ということです。そこには明らかに当人の意思があります。しかし、「未婚者だと言われていた」「言うことを聞かないと殺すと言われて付き合うしかなかった」など、自分の意思ではない理由で肉体関係を持った場合、法律では浮気と判断しません。
権利の侵害が無い場合
ここで言う権利とは、「夫婦が仲良く円満に暮らす権利」の事を指します。もし最初から二人の関係が破綻していた場合、そもそも「円満な家庭」は存在しなくなるので、例え婚姻関係だけが維持されていても、慰謝料の請求は出来ません。
不貞行為の時効が成立している場合
不貞行為があった事実を知ってから3年以上経過してしまうと、時効が成立するので慰謝料請求が出来ません。一度は浮気したパートナーとやり直しをして、どうしてもダメなら離婚する、という人は要注意です。余り気長に我慢強く頑張っていると、慰謝料請求も出来ずに泣き寝入りするはめになるので、ご注意を。
まとめ
人の心には必ず誘惑が過ぎる瞬間があります。快楽、スリル、そのような欲求を満たしてみたいと思う気持ちが浮気に繋がり、後悔しても仕切れない結果を招くのです。浮気に関わる法律を知っていたら、その知識は、誘惑に負けそうになった時のストッパーの役目を果たすかも知れません。浮気問題が起きた時には勿論、浮気を予防する為にも、浮気に関わる法的判断基準を身につけ、パートナーとのより良い関係を築いて下さい。